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不整脈治療とは                                                                                         寺田 健 先生(秋田県立脳血管研究センター 医師)

afのHRは90前後で良いとのことでしたが、元々徐脈性のafの場合(30~50)は経過観察で良いのでしょうか?
頻脈性心房細動において薬剤でコントロールする際は85〜110/分で大丈夫です。心拍数をコントロールする薬剤を使用していない状態での徐脈性心房細動の場合、心拍数を薬剤等で上げる必要はありません。徐脈性心房細動に対するペースメーカー植え込みに関しては、症状のない場合は適応がありません。RR延長による失神やめまい、眼前暗黒感の他に、安静時や労作時の心拍数が上昇しないことによる息切れ、呼吸困難、易疲労感などの心不全症状があればペースメーカー植込み考慮します。しかし、その症状が本当に徐脈によるものかを判断するのが非常に難しいため、安易に判断せず、慎重に適応を検討しています。以上より、ご質問にあった、「元々徐脈性の心房細動」の場合、症状がなければ経過観察になります。

不整脈治療に使用するデバイス                                                                                         安田 直人 先生(能代厚生医療センター 臨床工学技士)

ペースメーカーの設定を変更した場合、設定したHRより下がった時がありました。一時的なのですが、なぜだったのだろうと疑問に思っています。お分かりいただければ教えて頂きたいです。(その患者さんは、自覚症状ない為、様子観察の指示。その後、設定したHRに戻りました。)
設定したHRを下回る原因として、ペーシング不全、ペースメーカーのオーバーセンシング、フュージョン波形(詳細は質問③)、ペースメーカーのヒステリシス機能が考えられますが、一時的とのことなのでヒステリシス機能かと思われます。ヒステリシス機能とは自己心拍ができるだけ優先されるように一定期間だけペーシングを下限レートより遅らせる機能です。一定期間で自己心拍が確認されなかった場合は設定通りのペーシング間隔に戻りますので、その後設定HRに戻ったのだと推測されます。先の3つが原因であればトラブルにつながる可能性がありますのでまずはプログラマーでのチェックが必要かと思います。
モニター設定上、スパイクが見えない時は、どうA pacingを見たらいいですか?
モニターの心電図の感度を大きくし、P波の有無を確認しましょう。
Aペーシング不全が起きている場合はR波と同期がとれていない自己P波が出現するかと思われますのでプログラマーでのチェックが必要です。心電図モニターでは、少しの体動でもノイズや偽ペーシングスパイクが入ることが多いため注意が必要です。
フュージョンレートについて
自己心拍とペーシングがほぼ同じタイミングに発生する現象をフュージョンといいます。V側ではQRS波に重なって出現しますが、QRS波に遅れて出現することはないため、VT/VFなどの不整脈が誘発されることはありませんが、レートまたはAVディレイを延ばすと自己心拍が優先され、ペーシングの抑制、フュージョンの解消につながることが多いので設定変更を検討して下さい。
また、心電図モニター上では自己心拍とペーシング心拍の波形が重なり、波形が小さくみえる、モニターが波形を拾えず表示レートが下がる(心拍は確実にあります)ことがありますので注意が必要です。

ランチョンセミナー『不整脈治療の最近の話題/これから不整脈治療を始めるために』
西原 崇創 先生(東京医科大学八王子医療センター 医師)

リードレスペースメーカーはとても便利だと思っていました。右室心突部に固定するとのことでしたが、Vペーシングしかできないのでしょうか?
ご質問いただいたとおりで、現状では心室ペーシングのみになります。ですので、適応としては、従来のVVIペースメーカーの適応例が主な対象になります。心房側のリードレスペースメーカも開発中であると聞いていますが、しばらく先の話になると思います。
S-ICDを導入した方(40代女性)が乳癌検診を受けられるか心配していました。
ご心配いただくのも、もっともだと思います。最新の機種ではMRI撮像はもとより、マンモグラフィや超音波検査をお受けいただくことも可能になっていますので、安心してお受けいただいてよいと思われます。ただし、念のため初回は植込み手術を受けた施設での撮像をお勧め下さい。

不整脈治療における術前・術後の患者管理                                                                                         古林 晃 先生(岐阜ハートセンター 看護師)

内服中止に対して、リスク等を考えると中止はどうなのでしょうか。創感染に対して、抗生剤の他に何かないでしょうか。(例)外用剤塗布やリベG対応とか…
抗凝固剤や抗血小板剤の中止によるリスクは考慮されるべきです。当院では内服中止時はヘパリン点滴を実施しています。施設や担当医師によってご意向が違うとは思いますが内服中止中はほとんどのご施設で、半減期の早いヘパリン点滴に置き換えていると思います。創感染、いわゆるSSIに関してですが、原因は「患者」、「細菌」、「医療者」の要素が関係してきます。予防には術前から術中、術後まで創部の清潔保持が重要です。当院はペースメーカー植え込み術後、ハイドロゲル被覆剤による創部保護を行っており、1週間は剥がさず保持しています。また抗生剤の点滴だけでなく、患者の栄養状態や既往歴(特に糖尿病)を把握し、栄養改善や血糖コントロールを行なっていくことも大切です。
ペースメーカーやAFアブレーション術後の安静はどうなっているのか。プロトコールはあるのか。
基本医師の指示に従って行います。当院ではペースメーカー植え込み術後の場合、手術翌日までベッド上安静(仰臥位のみ)としています。心房細動アブレーションの場合、鼠径圧迫止血を5~6時間行い、圧迫解除後は沈子をテープ固定した状態で翌朝までベッド上安静(側臥位は可)としています。心房細動アブレーションは静脈にFrの大きいシースを使用するため、静脈からの遅延性出血に注意が必要です。
・当センターでは、9°入室ABL当日の深夜帯両ソケイ部のラジーレンの指示があります。深夜帯の負担が多く、できれば前日にラジーレンを行い、シャワーを行ってもらった方が感染面でもいいのではないかと考えているのですが、DrはABL当日にラジーレンをしてほしいとのことです。感染を考慮してほしいとのことです。他院ではどうしているのか教えて頂きたいです。なかなか、資料もなく業務改善に繋げられないで困っています。
・術前ラジーレンの今の考え方。やるかやらないか。(当院ではやっています。)
剃毛に関しては、意見が分かれます。当院も鼠径穿刺の際はクリッパー使用による除毛を行なっています。WHOが2016年に発表したSSI予防のためのガイドラインによりますと剃毛自体が推奨されておらず、行う場合にはクリッパーを使用して除毛するよう謳われています。また穿刺法においても剃毛による感染率の増加がデータとして出ています。そういったデータをもとにご施設のスタッフで話し合われてはいかがかと思います。
左上肢の安静は? 期間は?どのように? (当院では包帯3日間の固定。)
ペースメーカーの術後上肢固定は病院ごとに違います。だいたい1週間程度固定期間を設けている施設が多いように感じます。岐阜ハートセンターではマジックテープ式の胸部固定帯を使用し、1週間固定しています。
術前、術後の感染対策はどのようにしていますか?
1番目の回答と同じです。
アブレーションの為のクリニカルパスを利用していますか?
岐阜ハートセンターでは心房細動アブレーションと心房細動以外のアブレーションのクリニカルパスを使用しています。心房細動は2泊3日、心房細動以外のアブレーションは1泊2日入院です。
病棟からカテ室への引継ぎ書は、CAG(PCI,EVTを含む)とABLの用紙は一緒か教えて頂きたいです。また、カテ室からABLの引継ぎ書には、ABL部位、注意(継続項目)を記載しているのか教えて頂きたいです。
(例)pafのABLの際、病棟引継ぎ書には「TEEできなかった等」センサーによっては、温度センサー(TEEできなければ)も入らない可能性あり、中止の可能性がある為。(例)カテ室から病棟への引継ぎ書には、PVアイソレーション時の脳神経病状等の注意項目及びアブレーション回数が多い時のAVブロックへの注意等。記載し、引継いでいるのか知りたい。
アブレーション部位や穿刺部位、注意事項は電子カルテでカテーテル術前指示が出されます。アブレーションはCAGやPCI同様クリニカルパスを使用し、術前、術中、術後通して使用するため情報はパスの中に一括して入るように作成しました。そのため引継ぎ書は使用しておりません。
 当院は主治医制のため毎朝行われるカテーテル室カンファレンスで主治医と他のスタッフとで情報共有を行なっており、術中の注意事項はそちらで確認しています。もともと心房細動でアブレーションをされる場合、脳神経症状は合併症として重要であり、クリニカルパスの達成目標に関連症状として記載されています。そのため当院では病棟スタッフ全員がどんな状況でも対応できるよう合併症とその対応に関する教育を強化しています。